夏の風物詩 その壱

だいぶ以前の、まだ自分が20代の頃、三百床程度の総合病院に勤務してた時のお話です。夜間救急や入院もありますので当然のように当直がございます。当直室なるものはありますが、当直医師の出入りもありバタバタするのも落ち着かなくて嫌だったので、自分の職場の検査室に布団運んで休んだりしてました。実は検査室の先、廊下を真直ぐ行った先にの奥、エレベーター脇に霊安室が在りまして いわゆる霊感体質の僕は 線香の匂いや花屋の匂いを感じました。その日の夜は必ず当り日(患者さんがお亡くなりになる日)でした。何度か心霊体験らしきものを経験しましたが、今でも不思議で仕方が無い出来事があります。 ちょうど今くらいの時期の事です。夕方五時の当直入りから二時間位してからでしょうか? 部屋から見えるエレベーターの前をお婆さんがヒョコヒョコ歩いて行きます。お見舞いの方かな?…と あまり気にも留めずにいましたら、三十メートル程距離のあるエレベーター前から、いつの間にか僕のいる部屋の開けてあるドアの脇に来ていまして…こちらをジッと見つめながら、「すみませんねぇ、今晩、お世話を
おかけもうします…」 と こちらに語りかけて 横を向いたかと思ったらスーッと流れる…と言うか滑るようにしてエレベーター方向へ消えていきました。えっ!?俺 寝ぼけてる? 疲れのピーク? 等々しばらくキョトン状態でした。 そんなこんなで迎えた当直の深夜二時。救急搬送の連絡で仮眠から叩き起こされまして、運び込まれた患者さんに心電図のモニター電極をつけたりするのですが…瞬間 体が凍り付きました! もうすでに危篤状態のその人…夕方のお婆さんだったんです。どうですか? 少し涼しくなりましたか?