37 むかいあわせの、えび

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北陸のエビは、いつもひとりで、せっせと詞を書き、暮らしていました。雨の日も風の日も雪の日も、辛いこと悲しいこと、嬉しいことを。

北陸のエビは、小さな夢を抱いていました。いつか、自分の書いた詞が、曲になったら良いのになあ。10年前に抱いた、ほんの小さな、小さな夢です。

北陸のエビはある冬の日、何もかもが嫌になりました。海の水はしょっぱくて、周りは敵だらけのようで、深い深い日本海に、沈んでしまいたいと、何度思ったことでしょう。

そんな時、冷たい海に体を預けながら、エビは素敵な出逢いに恵まれます。神奈川のエビとの出逢いです。

神奈川のエビは、これまたせっせと詞を書き、曲を作り、歌っていました。

北陸のエビは、神奈川のエビが作る歌が、とても好きでした。沢山のデモ音源の中、お気に入りの曲が沢山出来ました。

「ねえ、歌ってみない?」

神奈川のエビが作る歌は、聴き手によっていかようにも見方の変わる、それでいて確かなメッセージ性が散りばめられた、そんなスルメ曲(聴けば聴くほど味が出る曲)なのです。

つづく。