私は喉が渇いていた。
あー喉渇いた。疲れた。ちょー疲れた。喉渇いた。ぶっちゃけ水分欲しくて、もう限界なんですけど。足す用も枯渇するくらい限界きてるんですけど。そのくせほんのり地肌は汗ばむんですけど。喉渇いたんですけど。
そんなことをぶつくさ思いながら家路を急いでいると、視界に飛び込んできたオアシス。自動販売機。
助かった。愛してる。
どっしりと構えた長方形の君に駆け寄り、その冷たいフォルムを指でなぞる。お茶がいい。お茶がいいわ……。
私がそう、囁くと、長方形の君は調子っ外れの関西弁でこう言った。
「いつもお仕事ごくろーさ…」
ほんまでっせ。
彼の言葉を遮り、私は震える指でなけなしの150円を投入し、目当てのボタンを連打した。ピッ。ピピピピピッ。
ガシャコンッ。
「まいどありー」
やっと手にした水分!ありがとう!ありがとう!
私は、ようやく水分補給ができるという安堵から、目頭を熱くし、ペットボトルのお茶を掴んだ右手に、より一層力を込めた。
……ん?
皮膚にひんやりと当たるその感触には確かに覚えがあった。しかし、それは私が求める手触りとはほど遠い。
まさか?
嫌な予感が脳をかすめる。
いやいや、まさか。そんなわけないだろう。確かにお茶のボタン押したっつーの。ケンシロウもたじろぐくらいの身のこなしでボタン押したっつーの。自販機早押し村民大会で2位の実績持ってるっちゅーの。
そんな私がボタンを押し間違えるなんて初歩的なミス、するはずがないじゃない。そうでしょう。そうだわ。何とか言いなさいよ自販機!
「いつもお仕事ごくろーさん!」
やかましいわ。なんで缶コーヒーやねん。
……ま、飲めればそれだけで有難いんです。
【と言うわけで、心理テストの答えは1番の缶コーヒー】
【心の中でつぶやいた一言は、やかましいわ。なんで缶コーヒーやねん。……ま、飲めればそれだけで有難いんです。】
で宜しくお願いします。
乃里絵でした。